三浦知良はなぜ引退しないのでしょうか。
「いつまで現役を続けるのか」
「もう引退してもいいのではないか」
「なぜそこまでしてサッカーを続けるのか」
59歳になった今も現役でプレーするカズには、称賛だけでなく、そんな疑問や厳しい声も向けられています。
実際、近年のカズは全盛期のようにゴールを量産しているわけではありません。
出場時間が限られたシーズンもあり、カテゴリーを移しながら現役生活を続けてきました。
それでも本人の言葉を長い時間軸で追ってみると、「なぜ引退しないのか」という問いへの答えは、意外なほど変わっていません。
2026年、カズは福島ユナイテッドFCでプレーしています。
Jリーグが始まった1993年から33年。
なぜ三浦知良は、今もユニフォームを着てピッチを目指しているのでしょうか。
三浦知良はなぜ引退しない?本人が語ってきた現役への思い
理由を探していくと、最初に目につくのはさまざまな「説」です。
1998年フランスワールドカップに出場できなかったことへの未練。
スポンサーやクラブにとって大きな広告価値があるから。
引退後の人生を描けないから。
あるいは、ただ意地になっているのではないか。
しかし、本人自身の発言を追うと、もっと単純な答えが見えてきます。
2025年にFIFAのインタビューで「引退を考えた瞬間はあるのか」と尋ねられたカズは、「ないですね」と答えています。
さらに興味深いのは、その後です。
35歳、40歳の頃から自分のプレーに対して「これではダメだ」と感じることはあった。
しかし、それは「辞めよう」という方向ではなく、「もっと頑張れ」と自分を奮い立たせる方向へ向かったと説明しています。
そして、プロになってから変わっていないものとして、
勝ちたい。
もっと上手くなりたい。
試合に出たい。
出られなければ悔しい。
という気持ちを挙げています。
59歳となった2026年にも、この感覚は変わっていません。
福島ユナイテッドFC加入後の取材でも、カズは「まだ上手くなりたい」「上手くなれるのではないか」と感じながら練習していることを明かしています。
つまり、本人の感覚では「59歳なのにサッカーを続けている」のではないのでしょう。
昨日より上手くなりたい。
試合に出たい。
勝ちたい。
プロになった頃から続いてきた一日一日の延長線上に、59歳の現在がある。

これは、同年代の私からすればとんでもなくポジティブな思考です。
ともすれば、年齢を理由にこれ以上上達することもなければ若い時と同じポテンシャルを出せるわけもないとあきらめを口にする自分との差に驚かされます。
「なぜ引退しないのか」という問いと、カズ自身が見ている景色には、最初から少しズレがあるのかもしれません。
「いい加減にしろ」「引退しろ」なぜカズへの批判が増えたのか
もちろん、現役を続ければ続けるほど称賛ばかりではなくなります。
年齢だけなら「59歳の現役サッカー選手」は驚異的です。
しかしプロスポーツである以上、本来問われるのは年齢ではなく結果でしょう。
近年のカズは、長い出場時間を確保できていたわけではありません。
2023年にポルトガル2部UDオリヴェイレンセでプレーした際には、約4か月間で出場時間は合計40分でした。
その後、日本へ戻ってJFLのアトレチコ鈴鹿クラブでプレー。
そして2026年には、所属元の横浜FCからJ3の福島ユナイテッドFCへ期限付き移籍し、5年ぶりにJリーグへ復帰しました。
かつて日本代表のエースとしてゴールを量産したキング・カズを知る人ほど、現在との落差は大きく見えるでしょう。
「もう十分ではないか」
「若い選手に枠を譲るべきではないか」
そんな意見が出ること自体は不思議ではありません。
カズ本人も、自分が若い頃と同じ身体ではないことを否定していません。
老いを無視しているわけでも、自分だけは永遠に衰えないと思っているわけでもない。
それでも続けています。
だからこそ、三浦知良という選手は、いつしか「何歳までできるのか」という話だけではなく、「そこまでして、なぜ続けるのか」を問われる存在になったのでしょう。
三浦知良は本当に「客寄せパンダ」なのか
カズについて語られるとき、避けて通れないのが「広告塔」「客寄せパンダ」という見方です。
確かに三浦知良の知名度は、普通のサッカー選手とは比較できません。
移籍すればニュースになり、会見には多くの報道陣が集まり、出場する可能性があれば試合そのものへの注目度も上がります。
2026年1月に行われた福島ユナイテッドFCの加入会見には、37社83人の報道陣が集まりました。
59歳のJ3選手の加入会見としては異例でしょう。
ならば福島は、単に知名度だけを求めてカズを獲得したのでしょうか。
クラブ側の説明は違います。
加入会見で福島側は、J2昇格を目指すために、拮抗した試合を勝ち切る経験や、チームの基準を引き上げる存在が必要だったと獲得理由を説明しています。
もちろんクラブにとって「三浦知良」という名前がもたらす経済的、広報的価値がゼロだと考える方が不自然でしょう。
しかし、ここで二つの話を分ける必要があります。
「なぜクラブが三浦知良と契約するのか」
そして、
「なぜ三浦知良本人が現役を続けるのか」
です。
カズに商品価値があることは、カズ自身がサッカーを続ける理由の証明にはなりません。
むしろ2026年の福島加入を前に、本人は「結果を出していない選手が本当に必要なのか」とクラブ側に確認していたことを明かしています。
自分自身も、契約されることを当然とは思っていない。
その言葉を見ると、少なくとも本人の中では「名前があるからプレーできて当然」という感覚ではなさそうです。
ワールドカップ落選が引退しない理由という説は本当?
もうひとつ、カズが現役を続ける理由として頻繁に語られるのが1998年フランスワールドカップです。
日本代表は悲願だったワールドカップ初出場を決めました。
しかし本大会直前、最終メンバーから三浦知良は外れます。
日本サッカーをワールドカップへ連れていく象徴的存在だった選手が、その舞台に立てなかった。
あまりにも劇的な出来事だったため、
「ワールドカップに出られなかった未練があるから辞められないのではないか」
という物語は、現在まで語られ続けています。
確かに、本人にとって悔しくなかったはずはありません。
ただし、「だから59歳まで現役を続けている」と結論づけるには別の根拠が必要です。
少なくとも近年の本人の発言を見る限り、現役を続ける理由として繰り返し現れるのは、ワールドカップへの執着ではありません。
上手くなりたい。
試合に出たい。
勝ちたい。
サッカーを続けたい。
こちらの方がはるかに一貫しています。
ワールドカップ落選は三浦知良という選手を語るうえで避けられない出来事です。
しかし、それを40年以上続くプロ生活すべての理由にしてしまうと、かえってカズ本人が語ってきた言葉から遠ざかってしまうのではないでしょうか。
それでも三浦知良が現役でいられる理由
「続けたい」と思うことと、「続けられる」こともまた別です。
ここが三浦知良の異常ともいえるところでしょう。
50代になっても、プロチームの練習に参加する。
試合に出るために身体を作る。
出場できなくても次の試合へ向けて準備する。
2023年のポルトガル時代、わずかな出場時間しか得られなかったときも、カズは練習を続けました。
本人は、その現実も含めて「現役でやり続けるということ」だと受け止めています。
そして2025年のFIFAインタビューでも、現役を続けるために自分を律してきたことを語っています。
それは結果として2026年にもつながりました。
福島ユナイテッドFCへ加入し、Jリーグへ復帰。
さらに同年6月には期限付き移籍期間が2027年6月30日まで延長されました。
クラブ発表によると、百年構想リーグでは6試合に出場。
そして天皇杯の福島県代表決定戦では先発し、ゴールも記録しています。
「59歳なのに頑張っている」というだけなら、ここまで長くプロの世界には残れないでしょう。
現役でいたいという気持ちと、それを実行する毎日の準備。
その両方が残っているから、現在も選手でいられるのだと思います。
若い選手から見た三浦知良は本当に通用していないのか
では、現在のカズはサッカー選手としてどの程度プレーできるのでしょう。
これは非常に難しい問いです。
全盛期のカズと比較すれば、スピードも運動量も違います。
かつて日本代表のエースだった選手と同じものを59歳のカズに求めること自体、現実的ではありません。
一方で、実際に対戦した選手からは、身体の使い方やボールの置き場所など、長年の経験による技術を評価する声もあります。
年齢を聞けば「59歳」。
名前を聞けば「キング・カズ」。
しかし、試合が始まれば相手選手にとっては一人のFWです。
ここには外から試合を見る人と、実際に同じピッチへ立つ選手との間に違った景色があるのでしょう。
もちろん、それだけで「現在も十分に通用している」と断定することもできません。
出場時間もゴール数も評価材料です。
ただ、「年齢が高いから通用しない」と結論を先に置くのもまた違います。
結局は、その日のピッチで何ができたのか。
プロサッカー選手である以上、カズ自身もそこから逃げるつもりはないのでしょう。
三浦知良はいつまで現役を続けるのか
では、いつまで続けるのでしょうか。
2027年2月26日には60歳になります。
ついに還暦です。
しかし、カズの発言を追っていると「60歳」という数字そのものをゴールにはしていません。
2025年には「引退したいと思ったことがない」と語り、2026年になっても「まだ上手くなりたい」という感覚を持ち続けています。
2026年6月には福島への期限付き移籍も延長されました。
少なくとも現時点では、「還暦だから終わり」という線は引かれていません。
おそらく、年齢だけを見て「何歳で辞めるのか」と考えること自体が、カズの感覚とは違うのでしょう。
身体が動くか。
練習についていけるか。
試合を目指して準備できるか。
そして、まだ上手くなりたいと思えるか。
そのどれかが失われたとき、初めて本人にとっての「引退」が現実になるのかもしれません。
だから「いつまで?」という問いには、今のところ誰にも答えられません。
カズ自身にも、まだ分からないのではないでしょうか。
昔は嫌いだったカズを、今は尊敬している
ここからは、一人のサッカーファンとしての話です。
私は昔、カズが嫌いでした。
ヴェルディ川崎が華やかなスター軍団としてJリーグの中心にいた時代。
カズはその象徴でした。

ライバルとして見れば、あれほど憎らしい選手もいなかった。
派手で、目立って、ゴールを決めればカズダンス。
テレビをつければ三浦知良。
「またカズか」と思ったことも一度や二度ではありません。
それから30年以上が過ぎました。
今、私は60代になりました。
そして、あの頃からピッチにいた男は、まだサッカー選手をやっています。
若い選手と同じ練習場へ行き、身体を作り、試合に出るために競争している。
59歳だから特別扱いしてほしいのではない。
むしろ本人は今でも「上手くなりたい」と言う。
ここまで来ると、昔抱いていた好き嫌いとは別の感情になります。
私は今の三浦知良を尊敬しています。
嫌いだったカズダンスさえ、あれはブラジルに渡り、その陽気さを身につけてきた経験の表れなんだと思えるようになりました。
今、若い世代がどんどん世界に羽ばたいている。
伝手さえない時代に、その先陣を切った彼はサッカーの未来を予見していたのかも知れない。
「引退しない理由」を調べ始めたのに、最後に残ったのは、実は理由らしい理由ではありませんでした。
ワールドカップへの未練だからでも、還暦という記録を作りたいからでもない。
今日もサッカー選手として準備できる。
まだ上手くなりたい。
試合に出たい。
だから明日もやる。
そこにあるのは「意思」。
「理由」ではないのです。
記録だけなら、いつか誰かに抜かれるかもしれません。
けれど1993年のJリーグ開幕を知る世代が、2026年になっても「カズはまだ現役だ」と話している。

三浦知良が記憶に残るJリーガーである理由は、案外そこにあるのかもしれません。
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